南ユダと周辺国の預言の最後の章になります。ツロという現在のレバノンの都市国家についての預言です。BC700年頃、南ユダのヒゼキア王の時代にイザヤに与えられたものです。富んでいたツロが荒らされ、70年後に回復されるという内容です。預言されたことと現在分かっている歴史の出来事がチグハグで、いつのことを言っているか判然としません。解釈が難しいのです。節ごとに解説しながら読み進めたいと思います。
1-3節:
ツロとシドンは地中海沿岸の都市で海上貿易を支配して莫大な富を得ていました。貿易の広がりはスペインのタルシシュからエジプトに至りました。ツロは金銭のためには、どんな国とも同盟関係を結びました。その姿は後の節で遊女のようだと書かれています。そのツロが破壊されるのです。荒らされたツロの港には船を入れることが出来ません。ツロで収入を得ていた船乗りたちに、ツロのために泣き叫べと言われます。「キティム」とはキプロスです。ツロの近くにある島国。ツロがアッシリアに滅ぼされたといううわさがキプロスから世界中に伝わります。
これは、BC701年にアッシリアの王セナケリブによってツロが攻撃されたことの預言と考えられています。・・・ただしこの時、ツロの島側は破壊されず、陸側が支配されただけでした。実際にツロが滅びたのはBC332年マケドニアのアレクサンドロス大王の時です。
「生計の道が絶たれ、エジプトの穀物が入らなくなった今、黙って静まれ」と、ツロの交易に関わっていた海辺の町の人々に命じています。シドンは、ツロの北にある町で、ツロと共に地中海の交易を支配していましたが、もうその道が絶たれるのです。
エジプトのシホル地方やナイル川地域の穀物がツロの大きな収益源でした。彼らは世界を股に、貿易を繰り広げていました。
4―6節:
土を耕し、種をまき、穀物を育てる農家などの労苦に比べれば、海運業では、労少なく、より大きな富を得ているのです。エジプトでは、これからどのようにして穀物を運んで売ったらいいか分かりません。場合によっては、売った商品のお金が入らない恐れもあります。船の手配などタルシシュと相談する必要も出てきます。
7-8節:
ツロが始まったのはBC1000年頃と当時から見ても古く、交易地を遠くまで拡大させていました。富んでいたので、周りの君主たちからは尊ばれ、まるで王たちのような立場を得ていました。
9―11節:
そのツロを滅ぼしてはずかしめたのは、主でした。海上貿易権を独占して自分の力を誇っていたツロは、すべての主権を持っておられる神に裁かれます。スペインのタルシュシュがツロにとってかわることになります。
12節:
エルサレムが滅んだときにツロは大喜びしてあざけったという記録があります。BC597年のことです。エゼキエル26章2節にあります。ツロと共に交易で世界を支配していたのがシドンです。キティムと言われたキプロス島に渡って地道に交易を進めるようにシドンに主は命じます。
13-14節:
カルデア人の国バビロンがまだ小さかった時、アッシリアに攻められました。「この民はもはや存在しない。」というほど徹底的に攻められました。そのアッシリアにタルシシュの船の港が滅ぼされるのです。
15-17節:
ツロがアッシリアに攻められた日から、七十年、その存在を忘れられますが、BC630年頃には、主によって回復させられ交易を始めるようになります。改めてお客を探して歩く姿が、忘れられた遊女にたとえられています。
18節:
再開したツロの貿易には、以前と変わる点があります。得た利益が自分のために貯めるのではなく、主の物となり、主の民の生活を潤すために用いるようになる、と預言されるのです。
バビロン捕囚から帰ってきたユダヤ人がエルサレムの神殿建設を始めたBC530年頃、ツロとシドンから来た人々が神殿建設に関わっていることがエズラ記3章7節に記録されています。再び富を得る町に回復したツロの富は、主の目的のために用いられる時が来るというのです。その時はキリスト以降の時代と考えられています。
ローマ人への手紙8章28節
「神を愛する人たち、すなわち、神のご計画にしたがって召された人たちのためには、すべてのことがともに働いて益となることを、私たちは知っています。」
とあるように、キリストがよみがえられた後の時代には、世界で生まれる富も神が働かれて、神に従う者のため用いられるとパウロは言うのです。
預言されたことが、預言の順番通りに起こっているわけではありません。ただ、世界の富も、国の盛衰も神の支配のうちに置かれていることを、この預言は伝えようとしているのです。
(小室 真)
